中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

平成18年二次試験 事例Ⅰ

事例Ⅰは組織・人事に関する問題。化学品メーカーを親会社に持つ化学品商社が対象企業。

第1問

(a)子会社であることの強みは、①親会社の事業拡大や企業グループの再編によって着実な事業基盤の確立が実現できること、②取締役クラスの人材を受け入れることによる、マネジメントシナジーが享受できる点である。

・・・売上の拡大や業界情報が得られるといったことも特記できるでしょうが、それらを”事業基盤に確立”でまとめ、与件にある代表取締役をはじめとした取締役の人材受入れが組織体制に確立と言う点で重要であると判断しました。

(b)子会社であることの弱みは、重要な意思決定については親会社の意向に左右されることである。特に代表取締役が親会社からの転籍者であることや給与水準が親会社より低いことは社員のモチベーション低下に繋がる。

・・・単に親会社からの社長であるという事実や給与水準外低い、という事実を文中から拾い出すだけでなく、それがモチベーション低下につながる、と一歩踏み込んで弱みとみなしました。

第二問

(1)海外の営業拠点を現地の情報収集拠点として活用し、委託コーディネート事業の拡大を図るべきである。具体的には、国内外の取引先の生産動向や技術動向を把握し、廉価品や環境化学品等を適宜組合わせ提案をしてゆく。

・・・文中から”機会”を拾い上げ、単に商品を横流しをするのでない高付加価値化を図るような意味合いで文章を、結論・その具体的内容と言う形で組み立てました。が、とにかく材料を拾って並べた、という感じもいたします。

(2)今後伸張が期待できる消費群や事業・営業拠点への経営資源の重点的な投入を図ってゆく。具体的にはファインケミカル品・環境化学品の取扱い強化や、国内営業拠点の整理統合と海外営業拠点の補強が考えられる。

・・・”事業の集中と選択を進めている親会社の動き”を意識した今後の事業展開の可能性を述べよ、という抽象的な問いでした。直接的な影響と言うより、親会社同様、集中と選択を進める、という着想で解答しました。

第三問

(1)現在の組織におけるデメリットは、A社の考えるビジネスモデルの構築が困難であることである。理由は営業エリア別組織と商品群別組織が混在しており部門を越えた意思決定や情報共有が困難であるからである。

(2)商品別及び営業別組織の統括責任者を据えることで、情報の共有や横断的な意思決定を図る。これによって各エリアの顧客が求める最適な製品やコーディネート事業における提案力の強化を実現できるからである。

・・・ここはどれだけ評価されたのか不明です。各受験校とも意見が分かれ、商品別組織が良い、顧客別組織が良い、いやマトリックス組織だ、と入り乱れています。それだけいずれも決定打に欠けるという気がいたします。どう区切っても縦割りが生じるのであれば、しっかりとリーダーを据えることが大切、と思った次第です。

第4問 A社における再雇用制度導入のデメリットは、A社の若返りが阻害され保守的な文化が残ることで新たなビジネスモデルの構築に支障が出ること、また退職金給付による一時的な財務負担が生じることである。

・・・”平均年齢が43歳”と新しいビジネスモデルへの脱皮、という与件から前半が導かれます。あまり一般論に目を奪われるのはよくない、と言われますが、”定年延長”でなく”再雇用”とわざわざ書いてあるので、後半にはそのデメリットも明記しました。

問題・解答例はこちら↓

http://www.tac-school.co.jp/sokuhou/chusho/chusho0610.html