中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

NOVA、最悪の経営者Ⅱ

まあ、出るは出るはNOVA元社長の猿橋望氏による会社私物化。会社のモノが俺のモノ。お前はジャイアンか!

豪華絢爛な社長室、二期連続赤字でも億単位の報酬、個人会社を介しての不当利得獲得・・・

保全管理人はスポンサー獲得のため経済産業省に支援を求め、外国人講師は大使館や大阪市役所に助けを求める・・・。

しかし非情な自由競争社会、特定の企業に対してお上が支援するわけにはいかず。傷口が浅いうちに再建に乗り出すための法律が会社更生法であり民事再生法なのだが、いかんせん経営者が悪質すぎた。

それにしても、である。非情な自由競争社会において健全性を保つための仕組みが株式市場であり、ガバナンス(内部統制)であったはず。ところが、このように悪質な経営者に対しガバナンスが十分に(というかまったく)機能しなかった、そうした市場経済における制度上の不備・不十分さについてのマスコミの報道はまったく目にしない。

規模の大きな会社において特定個人(特に経営者)が暴走すると社会的影響が大きいため、それをけん制するための仕組みが二重三重に張り巡らしてある。特に不特定多数から出資を募る上場企業については、さらにその仕組みが堅固になる。まずは取締役会、そして監査役による内部監査、さらには金融機関や監査法人など外部機関、そして株主総会である。ところが、NOVAにおいては超ワンマン社長なので取締役は逆らえず(2005年に、唯一物申すことができる年長の取締役が他界し、歯止めがかからなくなったらしい)、内部監査役もただのお飾り。監査法人にいたっては上場以来面倒を見ていた大手監査法人は2006年度の中間期に愛想を尽かし(?)契約解除(公式理由は業務量増加を理由に辞任(あずさ監査法人)、後任はアクティブ監査法人)。

負債が600億ということで気になって今期第一四半期の貸借対照表を見ていた、金融機関からの借入は負債の1割程度、長期借入金に至っては負債の1%程度だ。猿橋社長(当時)の横柄ぶりに何度もメインバンクは交代したというが、財務諸表を見る限り金融機関、少なくとも銀行はさっさと見切りをつけていたことがよくわかる。

そして2007年6月に開催された株主総会において「ワンマン経営でこのままいったらつぶれる。辞めたらどうか」との株主の発言に、猿橋社長(当時)は「私が辞めたら会社が崩壊してしまう」と反論し、総会を乗り切ってしまう。

同日に外部有識者によって設置された「経営改革委員会」においては「設置後1ヶ月を目処に、現状や原因の分析についての中間報告を行い、2ヶ月を目処に、最終的な報告を行うことを予定」していたが、何の報告もなされいまま経営破綻に至ってしまった。10月29日の報道によると、「猿橋氏は改革委に対して自己の正当性ばかり主張したため、改革委は「経営再建の障害になる」として退任やむなしの判断に向かったという。そして猿橋氏ひとりの抵抗で会社更生法適用の申請が遅れ、再建がより困難になったと指摘しており、他に耳を貸さない独善ぶりが同社の経営難を深刻化させたことがより明白になった。」とのこと。結果、他の取締役による代表取締役の解任、という形で会社更正法の申し立てに至ったわけだが、遅きに失したという感は否めない。社員の給与を支払えなければもう会社はアウト、8月における賞与の支払い遅延の時点でジ・エンドとなるべきであった。

いずれにせよ、まずは一日も早く猿橋元社長を法廷に連れ出し、犯した罪にふさわしい罰に服させることを願う。しかし、一人の悪人をさばくだけで解決としてはならない。ここでは被害者の救済、とは敢えて言わない。これは非情にも自己責任の市場経済だから。そうではなく、こうした特定個人の暴走が未然に防止されるよう、市場が健全に機能する制度のあり方を、関係機関は追及してもらいたい。そしてそれに関して、しっかり報道せよマスコミ!被害者ゼロの表示ごまかし事件なんか大々的に報道する暇があるのなら。

英国の大宰相チャーチルは言った。「民主主義は最悪の政治であるが、今まで存在したいかなる政治制度よりマシである」と。同様に、「資本主義は最悪の制度ではあるが、今まで存在したいかなる経済制度よりマシである」ためにも、健全に機能することを切に願う。

11/9 追記

その後、このような事態を引き起こしてしまった(見逃してしまった)会計監査制度そのものの不備について書いてあるブログを探したが、ほとんどが単にニュース記事のコピペ。問題提起をはっきりし示しているのは、このブログくらい。経営者の暴走を防ぐ教訓は、今回の事件から果たして得られるのか???

http://plaza.rakuten.co.jp/godlove/diary/20071031/