中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

大企業は人材輩出業たれ!

 若者の安全思考、リスク回避志向が強まっている。マイクロミルが2月に行った調査によると、いまどきの20代の8割は貯金をしており、『今後も積極的にお金をかけたいことにを聞くと、「預貯金」が最も多く44.2%、次いで「国内旅行」が37.2%、「洋服、ファッション」が36.2%だった。』とのことだ。そのほかにも、『酒離れ』、『車離れ』、『海外旅行離れ』など、若者が従来の世代と比べて、明らかに消費が堅実化している様子が伺える。

参考記事

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0803/05/news050.html

http://www.j-cast.com/2007/08/23010562.html

 そのような若者の消費性向を嘆いても仕方がないが、リスク回避志向の高まりは由々しき問題だ。社会経済生産性本部が新社会人に対して毎年行っている調査によると、「今の会社に一生勤めたい」とする回答は4年連続で上昇しており、が2008年春に実施した調査(47.1%)に引き続き、秋(今回)の調査でも39.5%と過去最高となった、とのことだ。

参考記事)

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/22/news045.html

 今の時代、向こう40年間企業が安泰なんてことはありえない。それどころか10年後すら読めない情勢だ。にもかかわらずというか、それゆえと言うか、入り口段階で安心できるところに就職して、そのまま一生お世話になろう、という新社会人が4割もいる、というのは驚きだ。

 小さなリスクを回避し続けるのは、将来的にはいかにに危険なことか、むしろエンプロイアビリティ(employability= 個人の“雇用され得る能力”)、さらに言えばサバイバビリティ(survivability=生き残る力)をいかに磨くことが大切かを知ってもらうためにも、彼らには勝間和代氏の『会社に人生を預けるな』と本田直之氏の『本田式サバイバル・キャリア術』を読んでもらいたいものだ。

 それはともかく、そのような若者のリスク回避志向、安全志向をただすべく、家族社会学の専門家である山田昌弘氏は本日の日経新聞インタビューにて、『大企業の採用は30歳からに』、と提言している。

 紙面によると山田教授は、「大企業の総合職と官庁のキャリアについては、三十歳くらいまでは法律で採用を禁止してはどうでしょう。大学を出たら、有能な若者も例えば中小企業に就職する。年齢の下限を超えてから大企業の総合職などの試験を受けられるようにするのです。中小企業が面白くなったら勤め続ければいい。中小企業の活力も高まると思います。」とのたまっている。

 山田昌弘氏は、「パラサイト・シングル」という言葉の名付け親であり、『希望格差社会』の著書で一躍”格差社会”の本質を世に問うた、優れた社会学者であると、私も認めるところである。ただし、残念ながらこの提言はまったく持って非現実的、的外れといわざるを得ない。

 第一に、大企業は法人数で言えば0.3%に過ぎないのだが(中小企業が99.7%)、常用者数は33.8%と3分の1の雇用を抱えている(中小企業白書2008年版より)。したがって、大企業の新卒採用を禁止してしまったら、中小企業がその受け皿にはとてもなりえない。

 第二に、人材の育成力・輩出力という点では、むしろ大企業の方が優れており、新卒で中小企業に勤めてしまうよりも、大企業で育成された人材が中小企業に人材が流れる方が、日本社会にとってむしろ良い効果を促すと思われるからである。

 確かに、大企業に入ったゆえに組織に染まって「カイシャ人間」となってしまう人材もいるだろう。しかし、手厚い新入社員研修によってビジネスの基礎を叩き込まれ、その後も継続的に体系的なビジネスの基本を学べる、という点では大企業の方がはるかに整備されている。さらに、大企業ゆえに大胆なチャレンジを行うことも可能で、これによって有能な人材が鍛え上げられ、外に飛び出して活躍している例も少なくない。

 人材を輩出している企業としてもっとも有名なのは「リクルート」だろう。「iモード」の生みの親で現バンダイ取締役の松永真理氏、(問題もやらかしたが)元ダイエーホークス社長の高塚猛氏、さらには杉並区立和田中学校校長の藤原和博氏と、教育界にまで人材を輩出している。また、ローソンの新浪 剛史社長や日本最大の食品スーパーであるライフコーポレーションの現社長岩崎高治氏は三菱商事出身だ。

 コンサルタントから経営者への転進の例で言うと、ボストン・コンサルティングからはミスミの代表取締役社長である三枝匡氏、全産業再生機構COOで 現”経営共創基盤代表取締役の冨山和彦氏、現マイクロソフト日本法人、前ダイエー社長の樋口泰行氏と、なかなか骨太の人材を輩出している。

 いずれも、大企業から大企業への転進ではあるが、まったく違う業界への転身にもかかわらず力強い経営力で企業に新たな生命力を吹き込んでいるのは間違いない。「若者が3年で会社を辞めてしまう」のはいかがなものかと思うが、一定のキャリアを積んだ人材が、大企業を飛び出して中小企業に転身する、その流れを作り出す政策提言をする方が、はるかに現実的であり、かつ日本経済の活性化に寄与するのではないだろうか。

参考) 同じような感想を持たれた方のブログ

http://ameblo.jp/feelworks-maekawa/entry-10233152997.html#tbox

 かく言う私も、20代を(一応)大企業で過ごし、色んなことを学ばせていただいた上で、中小企業に転身、今は中小企業診断士として中小企業の支援に携わっている。上記の人たちから見れば、はるかに青二才ではあるが、何とか中小企業の支援を通じて社会の活性化に寄与して行きたい。

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