中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

『新三種の神器』の曲がり角

 『新三種の神器』なんて、もはや歴史上の用語の感がある。日本が高度経済成長の時代に普及した、自動車(Car)、カラーテレビ(Color TV)、そしてクーラー(Cooler)のことを指す言葉なのだが、いずれも頭文字が”C”なので3Cとも呼ばれた。

 最後のクーラーはともかく、前の二つ(自動車&テレビ)は昭和から平成、20世紀から21世紀を経た現在、大きな曲がり角を迎えている。短期的には、世界邸名景気の悪化に伴う業績不振が顕在化しているが、中長期的に見れば『車離れ』、『テレビ離れ』が若い世代を中心に、着実に進んでいる。

 日本自動車販売協会連合会(自販連)の発表によると、2008年度の新車平均保有年数が8年を上回り、過去最長になるとの見通しとなる、とのことだった。これに対し、同会の天野会長は、『「買い替え需要を喚起するための、政策を次々と打ち出してもらいたい」と国に要望した』、とのこと(2月25日8時34分配信 フジサンケイ ビジネスアイ)。

 需要を喚起できていない自らの力不足を棚に上げ、国に要望したとは笑止だ。交通網が発達し、かつ駐車場代が高くつく首都圏・関西圏など大都市圏においては、特に若者の車離れが顕著だという。昭和の時代は車を持つことがステータスだったかもしれないが、価値観が多様化した現在において、車を持つ意義は薄れつつある。

 また自動車業界は盛んに『エコ』を唱えているが、そもそも車を買い替えない、持たない、乗らないことが一番エコだ。どんなに燃費の良い車や、(そもそもエコなのか疑問だが)バイオエタノールの車の乗るよりも、公共交通機関で移動する方がエコとして遥かに説得力を持つ。

 同じく、長らく茶の間(死語?)における娯楽の王様であったテレビの存在意義も揺らいでいる。主要キー局の今期決算は軒並み減収減益の見通し、中でも日本テレビテレビ東京は何十年ぶりかの赤字転落だという。短期的には景気の悪化に伴う企業からの広告費収入の減少が原因と言えるが、では国内の景気が回復したらテレビ局への広告収入は増えるか?と言えば答えは「No」であろう。

 テレビ局自体(特に民報)の怠慢による安易な番組づくりに加え、インターネットや携帯電話、さらには任天堂Wiiなど、テレビと競合するメディアや娯楽の台頭によって、もはやテレビは娯楽の絶対的な王様たり得なくなっている。にもかかわらず、目先の視聴率欲しさに、各局横並びのバラエティ志向は変わらず、昨年のゴールデンタイムにおける視聴率No.1は皮肉にもNHKであった。このことは、視聴者が騒がしいだけの民報番組から着実に離反していることを象徴的に表している事実と言えるだろう。

 自動車・テレビのいずれも、昭和・20世紀の時代において、確かに我々日本人の豊かな生活実現のために大きく貢献し、絶対的な王者であり続けてきた。今後もこれらなしの生活はあり得ない。しかし、その位置づけは着実に小さくなっていくであろう。そうした長期的トレンドを受け止めるのか、それとも抗う(あらがう)のか、その認識によって経営の舵取りは大きく変わってくるであろう(自動車産業、テレビ業界に限らず)。

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