電子書籍にルビ機能は必要か?
iPadの大ヒットによって、にわかに活気付いてきた「電子書籍市場」。
少なくとも、日本国内におけるiPadのヒットは、必ずしも「電子書籍」ではないのだが、国内メーカー各社はiPadヒットによって「電子書籍」市場の拡大が本格化する、と見たようだ。
昨日は、シャープが電子書籍事業に本格参入することを発表、そのデモ機のお披露目をした。
『電子書籍 シャープも本格参戦 ソフト&ハード アップル追撃』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100720-00000035-fsi-bus_all
この機種のウリは。電子書籍フォーマット「XMDF」を動画や音声に対応させた「次世代XMDF」。
アマゾンの「キンドル」など海外の電子書籍フォーマットは「EPUB」で、北米ではこれがデファクトスタンダード(事実上の標準)になっていると言う。
一方「XMDF」は、シャープが開発した電子書籍フォーマットで、縦書き表現やルビ、禁則処理などに対応し、携帯電話を中心に7000万台以上の端末に搭載されているという。
このフォーマットの件と、「大日本印刷や凸版印刷などの大手印刷会社や出版大手、毎日新聞社や日本経済新聞社、西日本新聞社など新聞大手と連携してコンテンツの供給体制をつくる構え」との記事を見ると、今回のシャープの新製品は、国内市場を主軸に考えられている様子。携帯電話同様に「ガラパゴス化」に陥ってしまわないか、懸念されるところだ。
そもそもシャープら日本メーカーが電子書籍のフォーマットとして「XMDF」にこだわるのは、現段階で「電子書籍」を「単なる本の電子化」と捉えているのではないだろうか。
難しい漢字・熟語の読みがわからない場合、書籍では「ルビ」という形式で対応したが、電子書籍においても「ルビ」を採用する必然性はない。
むしろ、その単語を指先でタッチすると、読み方や意味が表示されるなど、電子媒体ならではの方法で対応する、そうした柔軟な発想が必要なのではないだろうか。
歴史を紐解いてみると、新たな媒体が登場した萌芽の時期は、旧来のものの「丸写し」から始まり、その後独自の進化を遂げている。
例えば「映画」。初めは周りの映像を単に「撮影」するだけであったが、フィルムを切り貼りして別々に撮った映像があたかも同時に撮影したように見える「モンタージュ技法」が確立され、映画の表現方法は大きく飛躍した。
例えば「レコード」。当初はコンサートホールでの演奏を単に「録音」するだけだったが、こちらも「マルチトラックレコーディング」技術が確立し、 レコードならではの表現方法が確立された。
例えば「テレビ」。昔の演芸番組は、単なる「寄席」のネタをそのままテレビカメラの前で演るだけだったが、その後テレビ独自の「お笑い番組」、「バラエティ番組」が発展した。
このあたりについては、すでに引退した上岡龍太郎が詳しく述べている。
このように考えると、「電子書籍」も単なる本の丸写しではなく、独自の発展があると考えるのが当然だ。
電子書籍における先駆け的取組みとして、村上龍は新作「歌うクジラ」をiPadで先行して発売、オープニング場面では書籍では表現できないような、新たな表現方法を付け加えている。
何はともあれ、まだまだ始まったばかりの「電子書籍」。これを新たなビジネスとして軌道に乗せるかどうかは、旧来の「書籍」の延長と考えるのか、はたまた「新たな表現媒体の登場」と考えるのか、そこが分かれ目になってくるような気がする。
今後も、「電子書籍」とその周辺ビジネスに、ぜひ注目していきたい。
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