中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

「食料自給率」なんてナンセンス?

 本日3本目の投稿、最後は書籍紹介。記憶が新しいうちに書き留めておかないと、あとで苦労するので本日着手する。

 私が好む本のジャンルとして、一般的に当たり前のこととして定着している俗説を疑い、これを事実に基づいて覆す、という類のものがある。

 たとえば、『正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために』

参考ブログ) 「エコ」栄えて「国」滅ぶ?-2 2009年9月30日 (水)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/2-bdbb.html

 今回読んだのは、「食料自給率なんてナンセンス!」ということが主要テーマの書籍、『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率

 その前に、昨年読んだこの本を紹介しておきたい。『「食糧危機」をあおってはいけない』

 同書では、はじめに世界的に懸念される食糧危機について、楽観的な見通しを述べる。その根拠は、

・中国やインドなどの新興国は、経済成長が続けば先進国同様に人口増加率はゆるやかになる。

・一方で、まだまだこれらの国の単位面積あたりの収穫量は増やせる余地が大いにある。

という両面から、社会科で習ったいわゆる「マルサス人口論」を否定して見せる。また、欧米の調査期間の予測は、「先進国化とともに食文化も欧風化する」ことを前提としているが、これもナンセンスと断じている。

 日本の食が欧米化したといっても、一人当たりの食肉消費量は米国の3分の一程度。中国は牛肉というよりも豚肉文化であるし、インド人に至っては豚肉も食べない。食文化はおいそれと変わるものではないので、世界中がアメリカ人のように(莫大なエネルギー投入量が求められる)牛肉を食す自体はありえないと言う。

 そして、『日本は世界5位の農業大国~』にもつながってくるのだが、戦後のような「一億総飢餓」に備えた食糧安保体制を整えることは、まったくもってナンセンスであるとしている。

 なぜ、日本人は食糧安全保障を論じるときに、最悪の事態として戦後の「一億総飢餓」を想定するのか?それは、戦中世代の全日本国民が、敗戦による国交断絶と不作とが同時に起こった昭和20年を経験しており、その原体験がいまだに尾を引いていると、筆者は推測している。

 しかし今後日本が、世界を敵に回して全面戦争する事態は起こりえない。また、いわゆる太平洋戦争(大東亜戦争における日米戦)は、ABCDブロックによる「売らない」経済封鎖によって、日本が開戦に追い込まれた。

 しかし今や、小麦一つとってもオーストラリア、カナダ、米国にとって日本は重要な「買い手」である。日本が北朝鮮並みに周りを敵に回さない限り、これらの小麦生産者が日本に「売らない」、という手段を講じることは皆無といって良い。

 と、いったことを前置きに、『日本は世界5位の農業大国 ~』を読んで、「ナルホド」と感じた点をピックアップしてみたい。

自給率を「カロリーベース」で算出しているのは日本だけ。「自給率40%」と危機をあおるのは、農水省が自分たちの仕事を作り出すための詭弁・方便である。

・金額ベースでは日本は世界第5位の農業大国。金額ベースなら自給率は66%で、先進国の中で何と第3位に位置する。

・カロリーベースだと低くなるのは、自給率の高い野菜や果実のウェイトが低くなる一方、小麦や大豆のウェイトが高くなることに加え、輸入飼料で生産された畜産物が国産扱いから除外されるからである。

・日本人のエンゲル係数は、先進国の中で頭一つ数値が高いが(※残念ながら数値は示されていない)、これは自給率維持のため米価が高く維持されているからである。さらに自給率の向上を図ることは、低所得者の家計を圧迫することにつながる。

・日本の農業政策の一番の問題は、プロフェッショナルである専業農家のみならず、他で生計を立てている兼業農家までも補助対象にしていることである。

・輪をかけてひどいのが、民主党の「戸別補償制度」。これは経済政策でも社会政策でもなく、国民の税金1兆円をドブに捨てる「農業の衰退化計画」である。

民主党の「戸別補償制度」は、黒字化の努力を否定し、赤字を奨励するようなものだ。日本の農業界を赤字まみれのダメ農家で埋め尽くそうとしている。

 以降、先に述べたような「食料安保」の欺瞞、農家数減少や高齢化は問題ではない、といったように、世の中で常識とされてきた俗説を、次々と否定して見せている。

 最終ページにて、またまた民主党の「戸別補償制度」について厳しい言葉を投げかけている。「民主党は農場の衰退を願っているのだ。農場が弱くなれば弱くなるほど政治の力を必要とし、不安を抱く国民の農政への期待は高まり、一票の換金率は上がるからだ。」と、民主党を批判した上で、

 「自給率という名の呪縛が解けたとき、政治・行政主導による農業の時代に終止符を打つことができる。そして、自律した農業経営者の時代が始まるのだ。」と締めくくっている。

 果たして、それまでに優良農家は残っているのか・・・。鳩山首相がまた思いつきでトンデモ法案を押し進めているようで、気が滅入ってしまうのは私だけではあるまい。

鳩山首相 戸別補償、コメ以外でも リアル鳩カフェで』

(4月4日19時39分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100404-00000008-maip-pol

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