「Policy to help」でオール一次産業化?
平成21年もいよいよお終い、という12月30日に、鳩山内閣が新たな経済成長戦略の基本方針を閣議決定し、これを公表した。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/
本文1Pには、「失敗の本質は何か。それはリーダーシップ、実行力の欠如だ。」とあるが、「鳩山総理大臣自身の反省か?」と思いきや、旧政権への批判というから、のっけからずっこけてしまう。
それはともかく、「6つの戦略分野」として、4つの成長分野(「環境・エネルギー」、「健康(医療・介護)」、「アジア経済」、「観光・地域活性化」)と、2つのプラットフォーム(「科学・技術」、「雇用・人材」)とあるが、これらによって大目標である「GDP成長率名目3%、実質2%の成長」や、「GDPを2020年度650兆円」をどのように実現するのか、いまいち見えてこない。
前半の4つは確かに成長分野かもしれないが、現在GDPを生み出している既存産業に目を向けず、これら4分野のみに着目して、果たして経済成長が成し遂げられるのか?大いに疑問が残るところだ。
本日の日経新聞にも、「基本方針を読んでも、高い目標を実現させる道筋が見えてこない。」とした上で、「具体的な政策に踏み込んで説明していないこと」、「経済成長の主役が企業であるという視点が乏しいこと」を問題視している。
また、「生産性の向上や企業の活力を高める改革を進めないと、成長力は得られない」とした上で、「郵政民営化の後戻りや雇用規制の強化など、逆に効率を下げる政策に動いている。」と、今回発表された基本方針と今までの鳩山内閣の政権運営との矛盾も指摘している。
池田信夫氏によると、成長率を高める大局的な戦略を示すことなしに、環境・健康・観光などの個別産業に補助金を投入するのは、「古めかしいターゲティング政策」であるとした上で、このような方針しか打ち出せない鳩山内閣に対して、「アマチュア政権が続くかぎり、来年も日本経済の停滞は続く。」と厳しく批判している。
『民主党政権では日本経済は立ち直れない』 2009年12月30日
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51337317.html
紹介するタイミングを逸してしまったが、竹中平蔵氏の最新著作に興味深い一説があった。
『「改革」はどこへいった? 民主党政権にチャンスはあるか』
竹中氏は同著において、ポリシー(政策)には「Policy to help」と、「Policy to Solve」の二通りあるということを、政策を論じる際に理解しなくてはおかなくてはいけない、と述べている。
ヘルプの政策は、やった瞬間には心地がよく、ヘルプされて嫌な人はいない。その瞬間は誰も困らない上に、一定の経済効果はある。しかし、その効果はあくまで一時的なものであるので、効果が切れれば、また次のヘルプの政策をやらなくてはならず、いつまでたってもSolve(解決)されることはない。
一方、国際的な競争力が落ちてきた日本企業の競争力を回復させ、経済を成長させること、これが根本的で唯一のSolve(解決)の政策である、と同氏は指摘している。
しかし、12月25日に発表された来年度予算に関して、中小企業診断士である私にも関係が深い「中小企業関連」の予算を見る限りでは、「Policy to help」の色合いが濃く、「Policy to Solve」の政策はむしろ抑えられた、という印象は否めない。
中小企業政策の中で、もっとも重視されたのが「中小企業の資金調達の円滑化」である。「セーフティネット貸付等」は前年度から5.8億円増の192.3億円、「緊急保証制度等」は前年度から25億円増の81.0億円である。
一方で、「国内外への販路開拓支援」は前年度34.6億円減の85.9億円、「中小企業の経営力向上」は前年度から12.5億円減の101.0億円だ。
確かに、昨年のリーマン・ショックを契機に、中小企業の資金繰りは非常に厳しくなっており、ここを一時的にしのぐことで、優れた技術や経営ノウハウを有する企業を死に至らしめない、という点で重要な施策であることは否定しない。
しかしこれからの時代に、「止まない雨はない」と、景気回復をただ待っているだけの企業に未来はない。一時的な救急措置であるはずの資金繰り支援が恒常化してしまえば、日本のあらゆる産業が、農業や林業など「一次産業」と同様、補助金なしにはやっていけない産業と化してしまうおそれがある。
果たして鳩山内閣が打ち出した成長戦略に、どこまで「Policy to Solve」的な施策が盛り込まれるか?2010年6月を目途に、より具体的に取りまとめられるという「新成長戦略」に注目していきたい(6月と言うのは遅すぎないか?という気もするが)。
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