中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

”事業仕分け”は日本の未来に何をもたらす?

 民主党の一番のウリである、「行政のムダを省く」というマニフェスト実現のための、「行政刷新会議」による事業仕分けが、11月11日(水)から、いよいよ始まった。

 この会議の結果は、下記のサイトで速報が公開されるのみならず、インターネットによる生中継に加え、マスコミや一般人の傍聴も可能とするなど、今までにないオープンな形で進行される。

http://www.cao.go.jp/sasshin/

 こうした情報公開に対し、「透明性を高めた素晴らしい試みである」、との賞賛の声が聞かれる一方で、「民主党が”我々はこんなに頑張っています!”、ということを見せるつけたいだけのパフォーマンスだ」という批判の声も少なくない。

 さらには、蓮舫参議院議員をはじめとする仕分け担当者による手厳しい突っ込みには、「何様のつもりだ」、「まるで人民裁判のようだ」といった感想を持つ人も多い。そういった印象批判を別としても、この行政刷新会議には、いくつかのクエスチョンマークがつく。

・そもそも、行政刷新会議には法的な強制力がない

 11月13日付の日経新聞によると、「行刷会議も法的な強制力はない。決定後は財務省主計局が中心となり、各省庁の予算査定に臨む。」とある。

 これに対して池田信夫氏は、「そもそも査定対象として切り出した段階で財務省がつぶすつもりだから、初めに結論ありきでインターネットまで動員して官僚を「抵抗勢力」として血祭りに上げる儀式だ。おまけに仕分けの結果には法的拘束力がなく、財務省の査定の参考資料になるだけだから、政治主導どころか国会議員が主計官の下請けをやっているわけだ。」

 と、会議はパフォーマンス以上の何者でもないことを、強烈に批判している。

池田信夫blog 『事業仕分けという人民裁判』 (2009年11月12日)

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51310943.html

・仕分けメンバーに疑問アリ

 当初は、新人議員も含めた民主党議員32人で始まった作業は、小沢閣下(?)の大号令のもの、新人が外されて7名で運営せざるをえなくなった。そのために応援部隊として借り出されたのが、外部の有識者

 このメンバー選定に対し、亀井静香郵政改革・金融相は、「メンバーの中に外国人や外資系企業の経営陣が入り込んでいる点」に噛み付いたのに加え、麻生太郎前首相は、「国会議員ならともかく、そうでない方々は一体何の資格で言っているのか」と述べ、民間人が参加していることに疑問を呈している。今回は必ずしも当てはまらないかもしれないが、民間人登用となると、「偏った政治思想の民間人が入り込む危険性がある」、と言う点も、今後懸念される。

『自民総裁、事業仕分け「評価控える」=麻生前首相、民間人参加を疑問視』

11月12日17時28分配信 時事通信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091112-00000123-jij-pol

 加えて今回、仕分け作業で事業の必要性を訴えるのは、官僚がその役目を担っている。この点に対し、ある政務三役は「政治主導といいながら、こういうときだけ官僚を前面に出すのか」とこぼしたらしい。

 意外と見過ごされているが、確かにその通りだ。「国会答弁は政治家に限る」、とするのであれば、こうした会議においても担当大臣自らが、合計95兆円以上に膨らんだ予算に対して、各省庁の代表として予算の正当性・必要性を訴えるべきではないのか?民主党の「政治主導」が、いかに表面的なものであるかが、この点からも窺い知れる。

・何をもって「ムダ」と判断するのか、判断の根拠は妥当か?

 この点について、自分自身として十分な見識を持っているわけではないが、(独)理化学研究所の「次世代スーパーコンピューティング技術の推進」について、「来年度の予算計上の見送りに限りなく近い縮減」という方針が決定された。これに対して、同研究所の理事長でノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治氏は「(スパコンなしで)科学技術創造立国はありえない」と憤慨している。

 またまた池田信夫氏のブログからの引用で恐縮だが、そもそも「骨太の方針」が決まってないのに、「事業仕分け」で小骨ばかり取っても対して意味はない、『行政刷新会議の「無駄取り」そのものが無駄』であると、10月24日の段階で批判している。

「テレビの編集でいえば、45分番組の編集が90分になったとき、各シーンを1分ずつ削ったりしていたら番組にならない。プロデューサーが「どの話がいらないか」という方針を決めて、10分ぐらいのシーンを丸ごと落とすのだ。

 すべての行政サービスには法的根拠があり、その意味では無駄はない。概算要求で「三役査定」が失敗したように、既存の法律を前提にすると「その業務は**法で決まっている」と官僚にいわれたら終わりだ。何が無駄かを決めるには、まず規制撤廃によって政府の民間への関与を減らす必要があるのだ。法律を撤廃すれば「大きな無駄」はいくらでもある。」

池田信夫 blog 『行政刷新会議の「無駄取り」という無駄』 (2009年10月24日)

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51301607.html

 今後遡上に上げられる事業の中には、私が現在仕事で関わっている事業もある訳だが、先週のような流れの中で事業仕分けが進められれば、「それらの事業は国で行う必要はあるのか?地方に任せればよい。」といった結論を出される可能性が大いにある。

 以前のブログで、民主党自民党が掲げた「道州制」のような、地方分権をどのように推進するのか、「この国のかたち」を明確に示していない、と言う点を問題視した。

『国の出先機関は、擬似「道州制」!?』 2009年9月22日 (火)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-bf63.html

 特に私が住んでいいる中部地方(愛知県、岐阜県三重県)においては、市民に対する行政サービスはともかくとして、「産業の育成」や「新規事業の創出支援」をより効果的に進めるためには、「県単位」で進めるよりも「中部地方」という括りで進めた方が、何かと都合がよい。

 こうした観点なしに、闇雲に「中央から地方へ」という大義名分の下、産業振興策が地方に降ろされて、果たして日本経済は活性化するのか?そもそも「成長戦略」の視点が欠けているという評判の民主党であるがゆえに、適正な判断が下されるかどうか、不安を抱かずにはいられない。

 民主党政権が誕生して、緩やかながら進行していた回復基調に、早くも水が差されたことが、10月の消費動向調査で明らかになってきている。「子ども手当て」の財源捻出のために日本経済はガタガタに・・・、ということにならないよう、民主党政権の適切な舵取りに期待したい。

『指数上昇、9カ月でストップ=物価低下見通しも増加-10月消費動向調査』

(11月13日17時1分配信 時事通信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091113-00000127-jij-bus_all

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