中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

「エコ」栄えて「国」滅ぶ?

 鳩山総理が国連で世界に対してぶちまけた「CO2 25%削減」を宣言、通称「鳩山イニシアティブ」、カッコイィ~!!国内で喧々諤々(ケンケンガクガク)の異論・反論が出ると思いきや、意外とみんな「オトナの反応」で、(一部を除いて)経済界も妙に物わかりが良くなった印象。声を大にして反対を表明しているのは、日本鉄鋼連盟宗岡正二会長くらいか。

排出権取引環境税国際競争力を阻害、反対する=鉄連会長

(2009年 09月 25日 ロイター)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11654720090925

 よく例えに出されるように、100m短距離走で世界記録保持者が自己ベストを0.1秒縮めるのと、中高生が0.1秒縮めるのでは、難易度が全然違うのと同様に、省エネの優等生である日本と、(中国を含む)発展途上国では、C02削減の難易度は全然違うのである。ましてや、「25%削減」なんて、世界記録保持者に「0.5秒縮めろ」と言っているような物ではないか。日本国民の反応も意外と穏やかなものだが、「環境税」の導入が現実のものとなるときに、初めて本格的な反発が出てくるのだろうか。

 このように、(今のところ)印象論でしか論じられない「鳩山イニシアティブ」であるが、池田信夫氏はこれを「支離滅裂」と断じている。

 そもそも、(排出権取引などを実施せずに)国内だけで「鳩山イニシアティブ」を実現しようとすれば、政府の推定であっても「新車の90%をハイブリッド車にし、ガソリン価格を数倍にし、すべての住宅を断熱住宅に改築するよう義務づけるなどの大規模な統制経済が必要で、GDPは3.2%も下がる。」とのことで、同氏は「どう考えても実現不可能な目標である」と結論づけている。 

 では、「排出権取引をすればよいのか」というと、そもそも「排出権取引はアメリカの一部の州で実施されているが、それを考案したCrockerでさえも「国際的な排出権取引は不可能だ」と反対しているように、排出量の正確な測定やペナルティが実施できない」制度だという。さらに、排出権取引でもっとも重要なのは「排出量の割り当て」だが、それを決める科学的な根拠がなく、政治的な紛争になりやすいため、「政治的にも不可能」だとしている。

 そして冒頭で、「世界の主要な経済学者は、排出権取引よりも環境税のようなピグー税のほうが効率的で公正だと主張しているのだが、政治家にはまったく理解されない。それどころか、この二つが代替的な政策手段だということさえ認識してない人が多い。民主党マニフェストに至っては、
•キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。
地球温暖化対策税の導入を検討する。
と併記する支離滅裂なものだ。この両方を同時に実施することは不可能である。

 たとえば、あるCO2排出企業が、その排出権を他の企業から買って排出量をまったく削減しなかったら、どうするのだろうか。その企業に環境税を課税したら二重負担になるから、企業は購入した排出権を政府に買い取れと要求するだろう(つまり排出権取引は無意味だ)。もし課税しなかったら税の公平に反するので、税務署は許さないだろう。」と、政治に経済学が活用されていないことを嘆いている。

池田信夫Blog 『支離滅裂な「鳩山イニシアティブ」』 2009-09-26

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/95b9471cdbc2cfa7586819692f132421

 「排出権取引」については、まだまだ認識が不十分な点が多々あるが、仮に国際的に成立する仕組みが出来たとしても、日本が環境技術を発展途上国に供与した結果、その国が大幅 にCO2を削減し、「日本がその国から排出権を購入する」なんて状況はだけは、勘弁してもらいたいものだ。改めて、日本鉄鋼連盟宗岡正二会長の会見から引用しておこう。

 「日本の鉄鋼業界は、すでに世界最高水準のエネルギー効率を誇っており「削減目標が高ければ高いほど排出権を購入せざるを得ない。そうなれば、技術開発のための貴重な資金が海外に流出する」との懸念も示した。

 排出権取引環境税の導入についても反対の姿勢を明らかにした。排出権取引については「大きなコスト増で、国際競争力を大きく阻害する。工場の閉鎖、生産縮小、海外への生産移転を考えざるを得ず、国民経済、地域経済、雇用に大きな影響を与える」と、従来からの考えを繰り返した。」

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