内弁慶のトヨタに未来はあるか?
アクセルペダルをめぐる大量リコール(回収・無償修理)に続き、ハイブリッド車(HV)「新型プリウス」をめぐるリコール問題も浮上したトヨタ自動車が窮地に立たされている。
中部地域の経済と雇用を支える大黒柱であるトヨタではあるが、このブログではどちらかというと、批判的な立場での記事を書いてきた。そして今回も、批判的な記事を書かざるを得ない。
なぜなら、「トヨタの持つ強み」は多くの国内企業が持つ強みであると同時に、「トヨタの持つ弱み」は、国内企業が持つ弱みであると考えられるからだ。中小企業も、トヨタをお手本としてではなく反面教師として、今後の厳しい経営環境に挑んでいく必要があるだろう。
「プリウス問題」をめぐる対応として、まず第一に指摘すべきことは、「意思決定の遅さ」だ。2月4日行われた記者会見では、横山裕行常務役員は、「ブレーキを踏み増せばブレーキは利く」と説明し安全上の問題はないことを強調、リコールの基準となる保安基準にも抵触していないと回答し、この時点ではリコールは考えていない姿勢をうかがわせた。
『トヨタ横山常務「ブレーキ利きます」』 2月5日9時15分配信 レスポンス
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100205-00000007-rps-sci
翌日の2月5日、ようやくトップである豊田章男社長が記者会見に応じた。しかしこの席上で「品質はトヨタの生命線」としたものの、「リコールについては検討中」と、リコールそのものへの明言は避けた。
2月5日11時0分配信 時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100206-00000004-rps-bus_all
そして本日、(正式発表はないものの)ようやくリコールに向けて動き始めたようである。産経新聞の配信記事によると、「トヨタ自動車のハイブリッド車(HV)、新型「プリウス」にブレーキの不具合が発生した問題で、同社が国内でリコール(無料の回収・修理)に踏み切る方針を固めたことが7日分かった。国土交通省との最終的な調整を進めており、同省が近く発表する。」とのことだ。
『プリウス、国内でリコールへ 17万台以上が対象』
2月7日12時10分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100207-00000508-san-bus_all
第二に、「意思決定の遅さ」の裏側にあるのが、「トップのリーダーシップ欠如」である。先のアクセルペダルを巡るリコール問題から、今回のプリウスを巡る記者会見にいたるまで、豊田章男社長はなかなか前面に出てこなかった。ようやく出てきたと思ったら、トップが決断すべきを明言せずに、「お客さまの信頼を回復するよう努力します」、「一丸となって信頼を回復したい」と抽象的な表現にとどまった。
そして第三に、不祥事発生時の「リスクマネジメントの稚拙さ」である。特に「記者会見においていかに真摯な態度を見せるか?」、という点においてもトヨタの姿勢はほめられたものではない。今回、特に気になったのが横山裕行常務役員である。
記者会見で話した内容のみならず、映像を見る限り、
・姿勢がふんぞり返っていて、傲慢な印象を受ける。
・時々見せる薄ら笑いが、事の重大さを認識していないように見受けられる。
ことは否定できない。彼にとっては、決算発表で会う記者への記者会見と同じような気分だったのだろう。いつもとは違い、その一言一句に全世界の目が注がれていることを、果たしてからはどこまで意識していたのだろうか?
車に詳しいものの話を聞くと、確かに横山常務の言うとおり、「空走間はあるものの、しっかりブレーキペダルを踏み込めば、問題ない」そうである。しかし、トヨタは「カーマニア」だけに自動車を販売しているのではなく、マス、つまり一般大衆を相手にしている。であるのなら、一般大衆が走行中に不安を抱かせないような車を提供するのが、「顧客志向」を追求するメーカートップ企業としての務めではないだろうか?
先週末の中小企業診断士の会合で、中国に一年間出張してきた金融機関勤務の診断士から、中国社会の最新動向を聞く機会を得た。そこで印象に残った話の一つが、中国企業の「意思決定の早さ」である。彼が国内に戻ったところ、企業内に流れている時間感覚、時間軸がずいぶんのんびりしているように感じたという。
昨年末、トヨタは未来への生き残りをかけて、系列部部品メーカーに納入価格の3割減を要請した。内には強いが外には弱いという企業体質を、今回も露呈してしまったトヨタ自動車。内弁慶のトヨタに未来はあるか?
『トヨタ、部品価格3割引き下げ要請 系列に10年ぶり』
2009年12月22日6時23分 (asahi.com)
http://www.asahi.com/business/update/1222/NGY200912210025.html
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