中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

もう一つの『2011年問題』

 前回に続いてテレビの話題。

 前回、”うんざりするほどの番組宣伝”を民放のみならずNHKまで(今回の場合、『龍馬伝』)行っていたことを批判した。昨今のテレビを取り巻く厳しい経営環境を反映して、各局とも「放送外ビジネス」の収入増に躍起になっているようだ。

 年が明けてからタイミングよく、『テレビ局の裏側』という書籍を読んだ。著者は、かつてディレクターとしてテレビ番組制作に携わり、(番組名は明記されていないものの)いくつかの高視聴率番組も手がけた人物らしい。

 そんな、テレビ局の業界事業を知り尽くした著者によって、テレビ番組の制作の裏側から、キー局と制作会社間の格差問題、続発する捏造問題の根幹から、視聴率を巡る裏事情など、興味深い内容が満載となっている。

 テレビ局を”経営”という観点から見ると、将来の見通しは非常に厳しい。インターネットの普及を中心に”娯楽の多様化”によって、テレビはもやは”お茶の間(これすら死後)の王様”でありえなくなった。

 広告媒体としてのテレビの地位の低下と、昨今の景気の悪化によって、テレビのビジネスモデルの根幹である広告収入は激減、今期はいずれのキー局も赤字転落する見通しだ(確か)。

 広告収入源を補うための新たな収入源として期待されているのが、一つはテレビ通販。そしてもう一つがコンテンツをDVD化するなどしての物販収入だ。これと関連して、近年はテレビ局が映画制作に非常に力を注いでいる。

 テレビ局が参加している映画が「制作委員会方式」でつくられ、テレビ局、映画配給会社、広告代理店を基本メンバーとし、映画の入場料収入からDVD、さらにはテレビでの再放送、シリーズ化(『踊る!大捜査線』がその代表)、ドラマ化などを通じ、幅広い形で収入を得ようとするビジネスモデルである。

 その成否を握るカギは、何といってもその映画がヒットするかどうかである。そのためテレビ局は、公開直前に「これでもか」とばかりに映画の宣伝を自社の番組を通じて行う。

 特にそれが露骨なのがTBSで、少し前だと『私は貝になりたい』主演の中居正広、昨年だと『ROOKIES(ルーキーズ)』の出演者が、「番組ジャック」と称して映画の宣伝を行いまくり、全国の視聴者に大いに顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 今後もテレビ局は、本業の収益基盤が揺らぐ中で、番組制作費の経費削減と副業収入で何とか補おうという経営姿勢に拍車がかかることが予想される。しかし、露骨に副業収入を当てにしようとすることで番組の質が低下し、ますます「テレビ離れ」に拍車がかかる、そうした悪循環に入っているように見えてしまうのは私だけだろうか?

 ここまで、前置き(長い?)。

 本書で書いてあった興味深い話題が、アナログ放送が廃止されデジタル放送に移行する『2011年問題』である。一般には、2011年の7月までに地デジテレビ(もしくは地デジチューナー)を購入しないとテレビが見られなくなる、いわゆる”地デジ難民”が発生することが懸念されている。

 本書によると、『2011年問題』はエンドユーザー側のみならず、供給側すなわち番組制作会社にとっても頭の痛い問題らしい。つまり、今までアナログ放送用の機材しか保有していない多くの零細会社はハイビジョン機材への投資余力がないため、廃業せざるを得ない事態に追い込まれるという。

 一方で、エンドユーザー向けのデジタル家電の春の新作発表会のニュースに目を投じてみると、どうやら今年からデジカメは、”フルハイビジョン動画”撮影機能の搭載がスタンダードになりそうな勢いだ。

 昨年3月にハイビジョン動画(画素数:1280x720)撮影機能を搭載したデジカメ、『Lumix TZ7』がヒットしたが、今年はSonyがフルハイビジョン動画(1,920×1,080)の撮影機能を搭載した機種、『Cyber-shot DSC-HX5V』の発売を発表した。

 さらに、ムービーデジカメの元祖、Xacti三洋電機も負けてはいない。 今までも、小型・軽量、ガングリップタイプのムービーーデジカメ『Xacti(ザクティ)』で独自のポジショニングを築いてきた同社だが、今春はなんとフルハイビジョン(1,920×1,080)撮影可能で、厚さ27mm、重量142gの新製品、『VPC-CS1』の発売を発表した。

 いずれも、日本国内での発売時期は未定だが、発売されるのは間違いないだろう。ハイビジョン対応機種の新規投資に頭を抱える中小制作会社が、Xacti片手にテレビ番組制作、なんて日が実現するかも?

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