中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

日本「半導体」敗戦

 ここ最近、「日本企業は技術で勝って、なぜ経営で負けるのか?」をテーマにした書籍をいくつか読んで、そのポイントをブログに書き記してきた。

参考ブログ)

『ものづくり敗戦』 2009年7月29日 (水)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html

『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』-2 2009年8月15日 (土)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

サムスンに学ぶ。』2009年10月18日 (日)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-910f.html

 今回読んだ本は「半導体業界」に特化したものだが、ここで指摘された内容は今まで読んだ本と驚くほど共通項が多く、半導体業界に限らない日本の「ものづくり」産業全体を貫く問題であることを、改めて認識した。

 1990年代以降、半導体業界における日本企業のシェアは下降線をたどり、1999年にはエピルーダ1社を残すのみとなった。さらに本年、そのエピルーダさえも公的資金注入が発表されるなど、かつての栄光は見る影もない。

 なぜ「半導体」産業で、日本勢は惨敗したのか?著者はずばり、「過剰技術で過剰品質でつくっている」ことにあると指摘している。こうした惨敗の状況下にあって、日本の技術者や経営者が必ず口にするフレーズが、「技術では負けていない」だ。

 さらに著者は、これら日本メーカーの「技術」の捉え方そのものに疑問を呈している。本書によると、半導体技術の技術には①要素技術、②インテグレーション技術、③生産技術の3要素があるとした上で、

 日本企業は、①の要素技術にはやたらとこだわる一方で、歩留まり向上を追求する②のインテグレーション技術、さらにはスループット(時間当たり利益)向上を追求する(=低コストでモノをつくる)、③の生産技術の分野を軽視してきたと見ている。

 すでに半導体業界の凋落が鮮明になってきた2004年、著者はとある講演で、「日本半導体業界には過剰技術、過剰品質の病気がある。それゆえ、PC用DRAMを安く大量生産する韓国、台湾、米国マイクロンテクノロジーの『破壊的技術』に敗北した。」と述べたところ、大手半導体メーカーの常務がひどく立腹したという。

 さらに著者は、日本企業がアジア勢の「低コストでものをつくる技術」を、単なる「規模の経済」によって実現した、一段低い「低級な技術」との見方をしていた点を、問題視している。以前のブログでも紹介した、インドのタタ自動車による20万円台の自動車同様、半導体においても「低コストでつくる技術」は、簡単には真似できない高度な技術であり、「コストと技術は別物ではない」ことを、著者は強調している。

 同書の後半で、著者は家電分野におけるBRICs諸国での日本メーカーの存在感の薄さを、現地の視察を通じて実感している(インドにおけるスズキを例外として)。

 このような状況に対して、「日本エレクトロニクスは、ただ、作ったものを売っているだけである。サムスン、LG、ノキアは売れるものを作っている。」とした上で、「この差は、計り知れないほど大きい。」と述べている。まさに、「技術で勝って経営で負けている」状況だ。

 著者は、1980年代に大型コンピュータ用DRAMの生産で世界シェアNo.1になった日本の半導体メーカーを、かつて地球上で最強の生物となった恐竜に例えている。恐竜が環境の変化に適応できず絶滅したように、半導体分野で日本メーカーは技術文化を変えることができず、アジア勢に駆逐された。

 同様の動きは、現在家電分野でおこりつつあり、間違いなく近い将来、自動車産業でも起こり得る話だ。

 家電や自動車産業における日本メーカーは、かつて半導体産業で辿った道を歩むことになるのか、はたまた環境の変化に対応することができるか?「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があるが、日本メーカーは歴史に学ぶことで、この難局をぜひ乗り切ってもらいたいものだ。

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