中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

オリジナリティとは

オリジナリティ(Originality)とは辞書によると、

①独創力[性];新奇性,

②本物[原物]であること

とある。とかく①の独自性とばかり解釈されるが、「オリジナル」とは”原型”の意味であることから、②の意味が本来の意味であると、どこかで読んだことがある。

本日、企業支援の関係で、初めて志摩半島に行った。”志摩スペイン村”の派手な看板と、人通りの少ない駅前の風景とのギャップが妙に印象に残った。スペイン村は、1994年の開業初年度は370万人を越える来場者数で黒字を実現したものの、翌年以降は赤字経営に陥り、近年の来場者数は半分以下の150万人~180万人で推移している。

 名古屋には、”イタリア村”がある。ここには、、ミケランジェロダビデ像の”レプリカ”や、サンタ・マリア・イン・コスメディン教会の真実の口広場にある真実の口の”レプリカ”などが設置されている。開村当初は年間400万人に達した入場者も、2008年1月現在では半減し、運営会社の負債は約100億円に上っているらしい。現在はオリックス社等が支援の手を挙げている模様だ。オープンからわずか2年、凋落するには早すぎる。

 洞爺湖サミットで世界のVIPを招く北海道、ニュースでは”赤毛のアン”をテーマにした『カナディアンワールド公園』を有している芦別市が、カナダ元首の来訪を心待ちにしているらしい。ここに至っては、かつては”カナディアンワールド”というテーマパークであったが、赤字続きのため1997年10月をもって閉園。その後、芦別市が施設を再利用する形で、無料の市民公園として再出発させているとのこと。ちなみに運営会社であった第三セクター「星の降る里芦別」は、2007年6月に破綻している。地元の人はこのような状況を皮肉って『赤字のアン』といっているらしい。http://www.momonga.gr.jp/etsuko/Canada/whatc.html

 それはさておき、これら施設に私はどうにも拭いきれない違和感がある。そしてその違和感と、業績の不振とは強い相関関係があるように思える。その違和感とは、地元の文化とは全く関係ない、「ツギハギ」の文化を無理やり持ち込んだことである。そこには日本における”新規性”はあっても、真の意味での”オリジナリティ”はないからである。そもそも、イタリア、スペイン、カナダが本当に好きな人は、現地に飛んでいるはずだ。

 逆に、黒川温泉や日間賀島などは、真の意味での”オリジナリティ”を追及した成功例であるといえる。黒川温泉は温泉と木々、日間賀島は海とタコやフグなど海の幸である。いずれもその地域に深く根ざしている良さを、"明確な意図"を持って存分に引き出すことで、真の”オリジナリティ”を獲得し、訪れる人に深い満足を提供し、リピート化を促している。

 冒頭で志摩を悪く言ってしまったが、本日、志摩の伝統息づく、本来の魅力を域外に再発信する”タネ”に、本日出会った。なんとかこれを支援して、オリジナリティ溢れる地域を一つ一つ増やしていく、そのお手伝いをしてゆきたい、帰りの電車の中で改めてそのことを強く思った日であった。