ミツカンとP&Gが実践する『マーケティングとは顧客の創造』
先週参加した『6次産業化プランナー等人材育成研修会』にて、興味深い事例を聞いた。
商品開発・マーケティングの講義で台座として紹介されたのは、ミツカンの『とろっ豆』。
納豆のにおいを抑え、ネバネバフィルムをはがす手間を省いたゼラチン状のたれを仕込むことで大ヒットした『におわなっとう』。
納豆市場で後発メーカーであったミツカンは、このヒット作によって一気に業界第2位まで躍進したことは、ひろく知られている。
この『におわなっとう』をさらに発展させたのが『とろっ豆』であるが、その特徴は
1.豆がとても柔らかいこと
2.ネーミングやパッケージのロゴ、デザインがとても親しみやすいということである。
さらに工夫を重ねていることとして、この『とろっ豆』の”豆”の部分のデザイン(イラスト)にいくつかバリエーションがある、ということである。
セミナーの中では実際の商品を手にグループワーク(競合品を交えたポジショニングマップの作成)を行ったのだが、各グループの『とろっ豆』のパッケージデザインが、いずれも微妙に違っていたことに、参加者は一様に驚いていた。
これらの工夫、ミツカンはどのような狙いで行っているのか?
それは、ピーター・ドラッカー先生が「マーケティングとは顧客の創造である」と述べられたように、「顧客の創造」を狙っているの。
それでは、「創造すべき顧客」は誰か?それは「お子様」である、とのことだ。
お子様が嫌う納豆のにおいを極力排し、お子様が好むやわらかな豆、そして親しみやすいパッケージでお子様のこころをつかめば、その子の納豆のおけるファーストチョイスは、間違いなく『とろっ豆』になる、それをミツカンは狙っているのだという。
マーケティング用語でLTV(顧客生涯価値;life time value)というもがあるが、幼少のころから慣れ親しんだ食事やブランドは、その後の味覚や嗜好に大きく影響する。
いまだに「チキンラーメン」が根強い人気を誇っているもの、単に「味」という品質だけではなく、「幼いころ、若いころに食べた味が忘れらられない」、その記憶が残っていることが大きい。
ミツカンの講義を聞いて、私は別の事例を思い出した。
それは、インド市場におけるP&Gの取り組みである。P&Gは成長するインド市場のシェアを確保するため、田舎の学校に、(記憶が定かでないが)石鹸か洗剤を寄付しているという。
これは単なる善意ではなく、そもそも「石鹸で手を洗う」習慣のないインドの子供たちが、ゆくゆくは都会に出稼ぎに出た際に、「幼いころ使ったP&Gの石鹸をファーストチョイスする」ことを狙っているのだという。
両者の例は、いずれもまさに、LTV(顧客生涯価値;life time value)の最大化を狙った「顧客の創造」づくりを、原則通りに推進している好例だといえるだろう。
こうした事例をみて、「ミツカンやP&Gのような大手の真似はできない」と、中小企業はあきらめてはいけない。
もっと小さな市場、ローカルな市場でもよいので、地元でお子様に愛される商品づくりを行うことは、目先の売り上げ確保のみならず、長期間にわたって顧客の支持を確保できる有効な手段となる。
『マーケティングとは顧客の創造』、ミツカンとP&Gの取り組みは、その言葉の重要性を改めて深く感じた事例であった。
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