「代替品の脅威」に苦しむ任天堂
消費者向け製品市場においてアジア勢に劣勢を強いられるメーカーが多い中で、数少ない勝ち組企業の代表格であった任天堂。
(参考)
2009年4月16日 (木) 『マーケットインかプロダクトアウトか??』
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-b388.html
その任天堂が苦しんでいる。2011年の第一四半期営業利益は、四半期決算を開示し始めた2004年3月期以来、初の営業赤字に転落。
加えて、同社が自信を持って世に送り出した3D対応の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」を一万円値下げする措置を発表、ハード普及でソフトの売り上げ増を狙う戦略とは言え、苦し紛れの感は否めない。
『任天堂が通期予想を大幅下方修正、発売半年で3DS1万円値下げ』
ロイター 7月28日(木)23時54分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110728-00000218-reu-bus_all
苦戦の原因として、「まだまだ3D対応のソフトが少ない」、「東日本大震災の影響で消費が冷え込んだ」といった声も聞かれるが、果たしてそれだけだろうか?
過去のブログでも指摘したように、日本メーカー各社が「起死回生」の期待をもった3D動画について、消費者が本当に欲している機能であったか?
たとえ裸眼で見られたとしても、「動画が3Dで見ることができる」ことが消費者の購買意欲をそそる決め手にならなければ、ソフトが充実したとしてもヒットは望めないだろう。
(参考)
2010年4月28日 (水) 『3Dテレビはキャズム(溝)を越えられるか?』
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/d-c55e.html
それよりも、同社を取り巻く構造的な経営環境の変化が、「任天堂復活」の見通しを不透明なものにしている。
すなわち、「外出先で手軽にゲームが楽しめる」競合品として、スマートフォンが急速に普及しているからだ。
そしてそのコンテンツは、アップルやアンドロイドのアプリに加え、DeNA(モバゲー)やGREE、mixiなどSNSから提供される、(入り口段階では)無料のゲームも、大きな脅威となっている。
「Wii」や「DS」で実現した任天堂の成功要因は、ソニーのプレイステーションが高機能、高画質路線に傾く中で、「従来ゲームをやらなかった層」を積極的に開拓することで市場を拡大したことにある。
その任天堂が、同社の成功要因を踏襲しつつ、さらに「手軽さ」を売りにしたハードとソフトに苦しめられている構図になっている。
したがって、同社の経営成績が振るわなかったのは、単に短期的な要因(ソフト不足、震災)だけではなく、構造的なものであるといえるだろう。
さらに言えば、同社が提供するサービスの本質を、「ちょっとしたスキマ時間の退屈しのぎ」と定義すると、ライバルはさらに広がる。
すなわち、ゲームに限らずWeb閲覧ができ、TwitterやFacebook、mixiなどが楽しめるケータイやスマートフォンそのものがライバルであると言える。
これらの競合品は、マイケル・E・ポーターが提唱した「5つの競争要因分析」でいうところの「代替品」に当たり、任天堂はまさに「代替品の脅威」にさらされていると言ってよいだろう。
参考) 『5フォース分析(5つの競争要因)』
http://www.itc-sb.com/05_column/sub01.html
果たして、任天堂は「代替品の脅威」に打ち勝つ、新たな商品・サービスを打ち出すことができるか?
今後の同社の動きに注目していきたい。
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