「ユッケ食中毒事件」後の生食規制について考える
焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で発生した「ユッケ食中毒」事件、食中毒事件としては過去に例がないほどの甚大な被害をもたらしている。
まずは被害者の数。昨日(平成23年5月7日)時点で、102人に上っている。
『<生肉食中毒>発症患者数 死者4人を含め計102人に』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110507-00000075-mai-soci
さらには被害の深刻さ。
上記記事によると、死者が4人に上っていることに加え、24人の重症患者がおり、中には意識不明の方もいるという。
『3割重症、通常より高率=厚労省、温度管理など調査へ―焼き肉店食中毒』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110507-00000014-jij-soci
そしてもう一つは、被害エリアが広範囲にわたっていること。
このような重大な事故が起きたことは、まことに腹立たしいことであり、二度と起きてはならない。
と同時に、短絡的に「飲食、小売店における生食は禁止」へとつながってしまうことには、かつて食肉関係(スーパーマーケット)に関わっていた者として、いささか疑問を覚える。
まず確認すべきは、飲食業者「焼肉屋えびす」の問題。
巷で報道されているように、本来は厨房にて行うべき表面の「トリミング(そぎ落とし)」を省略していたことは、言語道断。
「卸売業者任せにしていた」、「数年前に自社検査を行っていたが、問題がなかったのでやらなくなった」、と同社(フーズ・フォーラス)の勘坂康弘社長はコメントしていたが、「食の安心・安全」に携わる者として、基本的な認識がまったく欠如していたと言わざるを得ない。
その後の報道で、過去にもたびたび食中毒をやらかしていたようだが、抜本的な衛生管理体制を築くことなく、「イケイケ」で成長路線を突っ走っていたことは、容易に想像できる。
次に、卸売業者。
被害が広範囲、かつ同時期に発生していることから、フーズ・フォーラス社にこの食肉を卸した大和屋商店、さらにはそこに食肉を提供した食肉加工業者の衛生管理が適切に行われていたのか、今後の捜査で明らかになされなければならない。
『4月14日出荷分が汚染か=ユッケ用生肉、患者集中―焼き肉チェーン食中毒』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110507-00000013-jij-soci
菌がどこで付着したのか、今後の捜査で明らかになると思われるが、広範囲にわたっていることから、食肉業者(卸売業者)以前の段階で付着していたと考えるのが妥当だろう。
以上のように、被害な甚大な生食による食中毒事件が発生したため、再発防止に努めなくてはならないのは当然なわけだが、果たして「即、生食の規制強化」とすることが適切だろうか?
厚生労働省の食中毒に関する統計資料によると、食中毒による死者は平成20年に4名(うち3名はふぐ)を出して以降、平成21年、平成22年とゼロである。
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/04.html
今回の事件発生で、フーズ・フォーラス社以外の飲食業者が、いかに生食提供に対して細心の注意を払ってきたかが明らかにされている。
たとえば、「牛角」を経営するレインズ・インターナショナル社は、「卸業者の細菌検査に合格したものだけを仕入れ、自社工場でさらに細菌検査を実施、加熱用とは分けて加工している。店舗でも、注文を受けてから肉を解凍するなど注意を払ってきた。」、とのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110506-00000028-mai-soci
つまり、運用さえしっかりと行われれば、今回の事件は間違いなく未然に防げたといえる。
筆者が特段「ユッケ好き」というわけでもないが、世の中の「ユッケ好き」、「牛刺し好き」の人々の思いにも応えられるような、妥当な規制の在り方を期待したいものである。
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