中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

「雇用の優等生」トヨタに未来はあるか!?

 国内における「雇用」を巡るニュースは、厳しい話ばかり。

 そんな中、久々に明るい話題が舞い込んできた。

トヨタ、正社員400人を採用へ 派遣から優先登用』

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/110105/biz1101051257011-n1.htm

「おぉ、さすがはトヨタ!他社とは違い、国内の雇用のことを考えてくれる!」

と手放しで喜びたいところだが、同社を巡る環境は、決して楽観視できない。

財部誠一氏が本年1月7日に寄稿したレポート、『いつまで続く、トヨタの漂流』を読んでみると、北米市場での苦戦ぶり、さらには同社の持つ「経営判断の遅さ」が目につく。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110106/256348/?P=1

以下、抜粋。

 「2010年の米国新車販売台数は前年比11%増の1158万9千台で、5年ぶりに増加したが、GM、フォード、トヨタ、ホンダ、クライスラー、日産の大手6社中、トヨタだけが販売台数で前年割れした。」

 リコール問題が災いしたことは間違いないが、それだけが問題ではないようだ。

 「家電業界だけでなく自動車業界でも韓国メーカーの躍進は大きく、米国ではヒュンダイの価格攻勢に日本勢が相当なシェアを食われている。ある自動車ジャーナリストは米国におけるトヨタ苦戦の一因としてヒュンダイの存在をあげている。」とのこと。

 本日、『2011年は「家電王国」崩壊元年!?』といったブログを作成したが、うかうかしていると自動車産業も、韓国勢に席巻されるおそれは大いにあり、ということだ。

参考) 2011年1月16日 『2011年は「家電王国」崩壊元年!?』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/2011-2194.html

 さらに問題を掘り下げていくと、財部氏は、「豊田章男社長の判断の遅れが、トヨタ凋落を加速化しかねない」、との懸念を示している。

 「リーマンショック後の日産の経営行動はきわめてドラスチックだった。販売台数最多のマーチの生産をタイへ切り替えたり、国内工場を北九州に集約していくなど、思いきった合理化努力がスピーディに行われている。」と述べたうえで、

 「それに対して、トヨタは工場閉鎖や人員合理化などには一切手をつけていない。それがトヨタの伝統だという見方もあるだろう。だが合理化の機会を失ってしまったという現実も見逃せない。」

 最後に同氏は、「単独決算で赤字を垂れ流しながら、合理化にも手をつけられぬうえに、豊田章男社長のリーダーシップも見えない。トヨタの漂流はいつまで続くのか。」との嘆き節で文章を締めくくっている。

 昨日の日経新聞によると、豊田章男社長は4月に中期経営計画を策定すると発表、その中で、「どうしても利益が出ないということになれば、生産拠点の移転も考えざるを得ない」と述べている。

 「極力、国内に雇用を残そう」というトヨタの姿勢は、当面の我々(特に中部地域の経済)にとってはありがたい話だ。

 しかし、自社を取り巻く経営環境を的確に察知したうえで「積極的に海外展開」するのではなく、「止むにやまれず海外移転」ということであれば、その事業展開は非常に心もとないものとなる。

 2009年6月25日の社長就任スピーチの場において、「『トヨタ丸』は嵐の中の海図なき航海に出ました。」とのスピーチを行った豊田章男社長。

 果たして現在、彼の頭の中に「海図」はあるのか?

 今後の彼の手腕に期待したい。 

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