佐々木俊尚氏のSONYに対する失望感
ITジャーナリスト佐々木俊尚氏の、Twitter上におけるSONYに対する失望のつぶやきが、昨日相当に反響を読んだようだ。
http://twitter.com/sasakitoshinao/
その発端は、以下のつぶやき。
「いまSony Readerを一応入手しておこうかと思ってネット直販のソニーストアに行ったら、WindowsのIE6.0/7.0以外では「正常に動作しないので推薦環境で読め」というふざけたエラー画面が出た。びっくり。 http://bit.ly/fWAXxZ」
かつてはインターネット・ブラウザのデファクト・スタンダード(事実上の標準)的存在であったIE(インターネット・エクスプローラ)だが、今やFireFoxが急速に追い上げているのに加え、Google Chromeが徐々に普及しており、近い将来IEのシェアは5割を切る、といわれているのに、である。
佐々木氏が憤慨しているのは、SONYが新たに世に問う、勝負をかけるべき「Sony Reader」を販売するに当たり、その購買者層をまったく考慮していないことである。
※ちなみに、ソニーストアは、WindowsのIE6.0/7.0を推奨環境としているが、その他のブラウザで閲覧できないわけではない。
さらに佐々木氏は、Sony Readerに対する不満を、以下のように述べている。
「だいたい今のウェブ業界のアーリーアダプタ層はかなりの率でMacに移行している。しかしSony ReaderのアプリはMac非対応。でもいまSony Readerを買おうと思う人なんてアーリーアダプタしか想定できないはずで、いったいどういう消費者層を想定しているんだか。」
このブログでも以前に触れたが、マーケティングの世界に、「イノベーター理論」というものがある。
これは、新たなジャンルの製品が世に出るとき、まずは新しもの好きの「イノベーター」が飛びつき、次に「アーリーアダプター」、さらには「アーリーマジョリティ」へと浸透する中で、モノが普及する、というもので、「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティ」の間に横たわるキャズム(溝)を越えられるかどうかが、大きなポイントとなる。
例えば、本年ブーム(というかメーカー側がやたらとしかけた)となった「3D液晶テレビ」など、キャズム(溝)を越えられるか、甚だ疑わしい。
参考)
2010年4月28日 (水) 『3Dテレビはキャズム(溝)を越えられるか?』
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/d-c55e.html
SONYが「Sony Reader」を、国内における電子書籍のハードウェアの代表的存在に押し上げたいのであれば、先ず狙うべきは「イノベーター」。
そのイノベーターの心をつかむための戦略が、SONYにおいて徹底していなかったことに対し、佐々木氏は失望感を隠しきれないようだ。
「ブランドとは顧客に対する『約束』である」、といわれる。
すなわち、ブランドとは、単にパッケージデザインやロゴ、プロモーション活動等を通じて発進される情報のみならず、「あらゆる顧客接点」を通じて蓄積された信頼によって構築されるものである、ということである。
果たして、SONYは顧客との『約束』を、どのように果たそうとしているのか、今回の佐々木氏の発言に対して、どのようなリアクションをとるのか(もしくは黙殺するのか)、注目してみて行きたい。
ちなみに「SONY Reder」に対する失望感は、これにとどまらない。その代表的なものが、「PCに接続しないと、書籍データがダウンロードできない。」といった点である。
スマートフォンが人気を博している点の一つが、「Apple Store」や「Android Market」を通じて、好きなアプリをその場でダウンロードし、楽しめることである。
この点においても「Sony Reader」は、顧客の期待を大きく裏切っているといわざるを得ない。
相変わらずの「ハード偏重」、「ソフト、ネットワーク軽視」という、日本メーカーの欠点をさらけ出してしまった感のある、「Sony Reader」。
果たしてSONY、さらには国内メーカーに明るい未来はあるのか!?
参考)
2009年7月29日 (水) 『ものづくり敗戦』
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html
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