中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

アップル、グーグル、マイクロソフト

 アップル、グーグル、そしてマイクロソフトを、企業経営や経営戦略の観点から論じた書籍は数多(あまた)ある。

 本日読んだ書籍『アップル、グーグル、マイクロソフト』は、「クラウド」を切り口として、各社の経営戦略の違いと「携帯端末」を窓口として激化するであろう競争の行方を予想している良書だ。

 著者の岡島裕史氏は、私の1つ年長の1972年生まれとのこと。技術的な分野に対する専門的な知見を持ちつつも、経営的な視点とのバランスも取れており、大変わかりやすく、また興味深く読むことが出来た。

 「クラウド」をめぐる戦い、と言っても、3社のスタンスはまるで違う。「これからは3Dテレビの時代だ!」というと、途端に同質競争におちいってしまう国内家電メーカーの戦いよりも、どう展開するかも予測しづらく、またそれが興味深い。

 第一に、グーグルのスタンスは非常に明確だ。同社は、Web上にある情報をいかに収集し整理するか、それに徹している。そこで彼らが引っ張り込もうとしているのは、全世界のPC端末それぞれのハードディスクに保存されているもろもろのデータだ。これをいかに「クラウド」に吸い上げるかが、同社が一番注力している点である。

 一方、マイクロソフトは、今までの収益基盤である、各端末のOSやソフトウェア、これらの収益を確保しつつ、移転の容易さをメリットとして打ち出しつつ、自社の「クラウド」に囲い込もうとしてる。

 ここで同書が、PC端末は「タンス預金」、クラウドは「銀行への預金」と例えたのは面白かった。なるほど、確かにその通りだ。今まで我々は、「タンス預金」という方法で、いかに自分の家の金庫を頑丈に、かつキャパを大きくするかに注力してきた。しかし銀行に預金すれば、そんな心配は要らない。それがまさに「クラウド」だ、ということだ。

 最後に、アップル社は両者とは趣が違う。iPodの普及とともに、ユーザーが利用するようになった「iTune」。これが自動課金システムとして、結果的に一番上手く言っているマーケットプレイスとなったと、著者は分析している。

 いずれも共通しているのが、「ハードウェア軽視」の思想である。もちろん、デザインはクールに、操作性はストレスなくといった要件は重要となるものの、日本メーカーのようなスペックや品質といったハード面へのこだわりが、いずれの企業にもほとんど見られない。

 この点を序章で指摘しつつ、終章で著者が主張していることは、「クラウドにおいて、大きさは正義」、「一番でなければ生き残れない」ということである(皮肉を込めて、蓮舫議員の「2番ではいけないのですか?」というセリフも引用している)。

 そして残念ながら、クラウドという分野において日本企業は大きく出遅れ、大型データセンターといっても収容するサーバ台数はトッププレーヤーと2桁違うという。

 このような日本の出遅れについて著者は、日本人の「ルール内で頑張る」という頑張り方に原因があると分析している。「ルールという縛りがないと思考がスタートしない」という悪癖を克服し、「ルール策定」に積極的に介入する「ルールブレイカー」たることが、求められるとしている。その代表例が、グーグルであり、アップルであるということだ。

 最後に、これだけ寡占化が進行してしまったクラウドという主戦場で、もはや日本メーカーがイニシアチブをとることは不可能、そうであれば日本人お得意の製品最終処理にこだわり、今後さらに高機能化が予想されるスマートフォンに、「ガラパゴス」と揶揄される携帯電話の製造技術を大いにつぎ込め、という提案を著者は行っている。

 まだまだ始まったばかりの「クラウド」と、そのサービスを受けるための「携帯端末」市場。果たして、日本メーカーは「ガラパゴス化」を強みに転化できるか?その推移を注目しつつ、私自身は「HTC Desire(X06HT)」の到着を楽しみに待つこととしよう。

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