『御社の特許戦略がダメな理由』
本日4本目の投稿ブログはお奨め書籍の話題。
本日読んだのは、『御社の特許戦略がダメな理由』。
テーマとしては、『ものつくり敗戦』、『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』と同一線上にある書籍といってよい。出願件数では特許大国と言える日本が、出願件数の割りに、それを企業の業績に結び付けられていない点を著者は問題視し、いかに特許を経営に役立てるかについて、著者自身の多岐にわたる知見を交えて、提案している。
本書の第一章において、特許範囲を見誤ったばかりに類似品の参入で事業化に失敗したケースや、特許を出したばかりに敵に塩を送る結果となり事業がつぶれたケースなどを紹介し、著者は「攻めの特許戦略だ大利益を生む」、「経営戦略という視点で特許を見ること」の重要性を説く。
興味深いのは、『ものつくり敗戦』と同様、日本メーカーの根本的な弱点が表れた象徴的存在として、日本軍を引き合いに出していることである。
詳細は、過去のブログを参照してもらうとして、
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html
『ものつくり敗戦』においては、日本軍は零戦を筆頭として、当時最先端技術で戦闘機・兵器の製造を実現しえたにもかかわらず、標準化・規格化・システム化の思考に欠けていたがため仕様変更が遅々として進まず、結果として兵器の質や使い勝手において米国に追い抜き追い越された、という点を指摘していた。
本書においては、主として日本海軍を例に取り、また別の角度で「戦略不在」が敗戦に導いたと分析している。
軍艦の半分を大西洋に配置する必要がある米国は、いざというときのためにパナマ運河を通る必要があるが、その制約条件がない日本海軍は、46センチ砲を積み込んだ巨大な戦艦を保有することが可能となった(大和・武蔵である)。
主力戦艦同士の対決となれば、この2つの戦艦を有している日本軍が有利にことを進められる見込みであったが、太平洋戦争は「航空戦」の時代に突入していた。
ここで注目すべきは、「航空戦」の時代を切り開いたのは日本軍である、ということである。日本軍は、当時の技術の粋を集めて零戦の開発に成功、真珠湾攻撃で華々しい成果を挙げたにもかかわらず、最後まで「大艦巨砲戦略」を捨てきれず、航空戦力を機軸とした戦略変更は行われなかった。
また、『ものつくり敗戦』でも指摘されたように、零戦は3年間仕様変子が行われなかったのに対し、米国は「大艦巨砲戦略」を捨てて航空戦力の機軸とする戦略に転換、ごく短期間にゼロ戦に勝る戦闘機と多数のパイロットの養成を行い、零戦部隊を凌駕する航空戦力を保持するに至った。
この事例を「知的財産的」に言えば、日本は大発明をしたものの、特許戦略の軽視によって外国に模倣を許したと、著者は分析してている。
以上の例から言えることは、ものづくり分野においても、知財分野においても、日本(軍隊、企業)は個別具体的な技術開発には高い成果を残しているものの、「戦略的視点」、「経営的視点」に欠けているがゆえに、上手く業績に結び付けられていない、ということである。
そして、この欠点は今なおひきずっていると言って差し支えない。例えば、「iPhone対抗馬」と目されるドコモのXperiaは、「ハードにおいて間違いなくiPhoneより優れた部分の方が多い。しかし、サービスまで含んで考えると差は大きい。」と、日本メーカーらしさ満点の製品に仕上がっているようだ(ソニーエリクソンはスウェーデン企業との合弁らしいが)。
【AV Watch】
『Xperiaは「高性能AVスマートフォン」になれるか ~ドコモの「iPhone対抗馬」の実力は?~ 』
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/rt/20100416_361513.html
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