「脱皮」なくして成長なし。
新年度が始まった。多くの人が、人生の新たなスタートを切る時期、環境が変わる人もそうでない人も、自然と気持ちが引き締まる。
エビやカニなどの甲殻類は、ご存知の通り「脱皮」を繰り返して成長する。脱皮直後は、体を覆う殻が柔らかく、外的に襲われたときに危害を受けやすい状態になる。
成長することを「殻を破る」と表現するように、自分の身を一時的に危険な状態にさらすリスクを負っても、「脱皮」なくして成長というのは実現できないのである。
一昨日、岐阜方面に足を運んだ際、新入社員として配属された店(バロー市橋店)が丸ごと立て替えられていたので驚いた。この店は平成元年にオープンし、その後の同社が標準展開する、モデル的な店舗である。
社員に配布された冊子には、市橋店のことをこう記してある。「(平成元年)6月にオープンしたこの店は、バローのアップスケールのスペシャリティストアの店舗として位置づけられた。また市橋店は店舗運営オペレーションの基本的考え方が確立した店である。」
オープン以降、少なくとも1回は建物はそのままにリニューアルを行った記憶があるが、さすがに築20年経つと、低い天井と暗い照明、500坪に満たない売場面積では競争力に欠ける、ということで今回思い切って建物ごとのリニューアルに踏み切ったとであろう。ちなみに、今までは駐車場をはさんで隣に位置していたドラッグストア(Vドラッグ)も建物の中に組み入れられ、利便性を増している。
バローは今期、前期の1.5倍である18店舗の新規出店を見込んでおり、とかく新規出店にばかり注目が集まるが、既存店の定期的なリニューアルを図ることで、足元の競争力の実現している。
美濃加茂店や(可児市の)広見店などは、地元のドル箱店舗であり、そのままでも十分に競争力がある。にもかかわらず、最新の品揃えやレイアウトなどの実現のために、約5年の周期でリニューアルを実施している。
リニューアルするためには、少なくとも1ヶ月、建物ごと立て替えるのであればさらに長期間休業を余儀なくされ、当然売上は見込めない。エビやカニの脱皮同様のリスクがある訳だが、将来的にわたる競争力を維持するためには、このように敢えてリスクを侵す必要があるのだ。
もちろん、リニューアルを行うためには資金の目途を立てる必要があると同時に、新規投資に伴う減価償却費を吸収できるだけの収益性を確保する必要がある。「老朽化が激しいからリニューアル」ではなく、あらかじめスケジュールに組み込んだ「戦略的なリニューアル」を行っていることが、現在のバローの強さの一因であることは間違いない。
本日の日経新聞によると、外食産業の「勝ち組」の一つであるマクドナルドホールディングスは今年、全店舗の1割に当たる433店を閉店し、3~5年かけて633店を移転するなど、3店に1店は閉鎖または移転するとのこと。
マクドナルドもユニクロ同様、「安売り」によって勝ち組になったと言われることが多いが、商品戦略同様、店舗戦略においても「脱皮」し続けることで成長を維持している、と言えるだろう。
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