中小企業診断士えんさんの視点!

岐阜県を中心に活動している中小企業診断士のえんさんこと遠藤久志が、独自の視点で世相・経営・マーケッティングの本質に迫ります!

日本が「名古屋化」する!?

 少し前の名古屋ブームの際、「名古屋本」なるものが結構出版されたが、「名古屋人(名古屋を中心とする中部圏の人々)の特徴」は、「世界における日本人の特徴」に似通っているという指摘を読んで、「なるほど~」と感心したことがある。

 確かに、まじめでルールを守る、堅実で貯金好き、几帳面でものづくりが得意、自由で型破りな発想は苦手、身内意識が高くて排他的、お上(権威)・ブランドに弱い、などなど、思いつくところは多い。

 ある本によると、江戸時代に徳川家康が天下をとったことにより、徳川親藩松平氏など)に加え、三河出身の譜代大名(井伊、本多氏など)、さらには豊臣秀吉ゆかりの加藤清正福島正則などが日本津々浦々の大名となったことで、(三河も含めた)名古屋的気質が全国に行き渡った、とかなり強引な仮説を打ち立てていた。

 それはともかく、「カイゼンは得意だが見えないものを見通す洞察力は弱い」というのは、(名古屋圏を代表する)トヨタの持つ弱さであり、かつ日本の製造業全体の持つ弱さではないかと、度々このブログで指摘している。

 そんな個人的な思いに相通じるような書物を読んだ。『グローバル・マインド 超一流の思考原理 日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか』(藤井清隆著)がその書物だが、著者は大前研一氏率いるマッキンゼーに東大から新卒で入社して米国でMBAを取得、魚ウォール街を経てSAPというシステム会社の日本法人社長、さらにはルイ・ヴィトン日本法人社長を務めたという異色の経歴の持ち主だ。

 彼の指摘によると、今の日本は「名古屋化」しているという。近年の日本の経済規模は、世界の中でちょうど10%程度に対し、名古屋圏は日本の中でちょうど10%という位置づけだ。そして、名古屋圏には多くの大学もあり、トヨタを筆頭に立派な企業も多い。経済・生活圏として自給自足が出来るがゆえに、県外へと多くの人が流出することもない。かといって、首都圏や大阪圏のように、他の地域から人を吸引するほどのダイナミックな力もない。

 このように、日本における名古屋圏同様、世界の中の日本は、「大きすぎることもなく小さすぎることもない、こぢんまりとまとまった市場」となりつつあると言うのだ。「それでいいじゃないか、という声も聞こえてきそうだが、中国を初めアジアの新興国が著しい成長を見せている中、今までは「消費者はうるさいが魅力的な市場規模」であったのが、「消費者はうるさいし、市場規模としても魅力が薄い」市場になりつつある、というのだ。

 これは海外の企業だけが感じていることではなく、日本の大企業も同様で、シャープやパナソニックがものづくりにおける「地産地消」を進めつつあるのは、先日のブログで紹介したとおり。キリンとサントリーによる強者連合も、このような流れの中で決断されたこととみて良いだろう。

2009年8月16日 (日) 家電メーカーで「地産地消」が進む?!

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-a2e1.html

 したがって、もはや「雇用の受け皿」として大手家電メーカーによる労働集約的な大工場が国内に建設されるという期待は薄く、それを前提に雇用問題を論じなければ意味がない。ちなみに城繁幸氏は、雇用問題に対するスタンスを下記の4つに分類し、

(1)最賃引き上げ、より充実した社会保障、積極的雇用政策などを含む流動性の高い労働市場
(2)流動性の高い労働市場だが、規制も社会保障もきわめて限定的
(3)一定の規制緩和を進めるが、あくまで従来型の正社員長期雇用を軸にし、新たな社会保障政策にも消極的
(4)従来型の正社員長期雇用を軸にしつつ、そこから漏れた分は社会保障で面倒見るよう主張する一派

 (3)と(4)を志向する人は、もはや”宗教化”している、と皮肉っている。

 そのような現実を踏まえ、前述の藤井清隆氏は著書の中で、日本人の持つ弱さとして、以下のような点を指摘している。彼は学者ではないので、裏づけとなる膨大なデータを示しているわけでないが、その指摘はズバリ本質を衝いていると思う。

・ソフトウェアの分野においては、日本人の「完璧主義志向」が邪魔をしている。これは大量生産型の産業製品には威力を発揮するが、試行錯誤型、顧客参加型、抽象志向が主体のソフトウェア産業には相性が悪い。

・顧客のニーズ追従は必ずしも善ならず。スピード社の水着は、締め付けはキツイが早く泳げる。時には選手に嫌がられても新しい発想を優先すべき。イノベーションの局面になると、日本の「顧客至上主義」は、発送の狭さが露呈して後塵を拝する羽目になる。

・「現場尊重」は大切だが、行き過ぎた「現場至上主義」は問題だ。「現場至上主義」の弊害は、レバレッジ(てこ)が効かず、大きな構図を変えるには現在に縛られた考え方に陥りやすいことである。

・「現場至上主義」は、構想段階である未来のものや、ソフトウェアやビジネスモデルなどの抽象概念に近いものの評価が低くなる。会社の経営陣にあまりに現場至上主義が強すぎると、発送に柔軟性を欠き、知らないうちに自分が格下と思っている会社に外堀を埋められてしまう現象が起こり得るのだ。

・「正解」を求め、「誤りを犯すことへの恐れ」を生み出す教育は、試行錯誤を必要とするものへの大きな障害となる。ソフトウェアや顧客参加型のビジネスモデルは、今後ますます重要となってくると考えるが、「完璧主義」はこの大きな弊害となる。

参考ブログ)

2009年4月16日 (木) マーケットインかプロダクトアウトか??

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-b388.html

2009年3月16日 (月) 現場主義は是か?

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-f739.html

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